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今のぼく、そして過去のぼくのこと。


by cheaptrip
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川口

日曜日だが、昼には川口にいた。仕事で。

荷物の納入先である市立の立派なギャラリーは、昔ビール工場の敷地であった。子供の頃祖父の家に遊びに行った時、赤羽から京浜東北線に乗り、川口を過ぎると茶色の有葢車がずーっと連なっているのを見ていた。貨車の行列が途切れると西川口、蕨で、祖父の家のある南浦和が近くなる。南浦和は電車の終点なので、駅が近づくと電車はスピードを落とし、ゆっくりと転轍機の上を通過し折り返しホームへ入る。ゆっくりした速度はこれから始まるであろう祖父の家での楽しい時間を過ごす序曲のようでもあり、子供ながらに心躍る瞬間でもあった。

大学を卒業する直前だったと思う。今度は川口の忠実屋というスーパーをダイエーに改装する仕事で1ヶ月程働いた。古びた鋳物工場のある町はあちこちでほじくり返され、区画整理、道路の拡幅をやっていてやけにほこりっぽい町であった。ぼくたちは、毎日朝の8時から夕方の6時まで、床にタイルを貼ったり、什器を組み立てたり、要らないゴミを廃材車に何度もなんども運んだり、渋滞で遅れているトラックを寒風の下で待っていたり、ということをしていた。昼食は、毎日現場のすぐ近くにある「餃子甫」という中華料理店にいった。以前「悶絶A定食」というカテゴリーで書いたが、Q定食R定食までバリエーション豊かであり、1ヶ月行っても全部のメニューを制覇する事はもちろん出来ないし、先週食べたのが一体、Cだったのか、Fだったのかすらよく分からない、という変な店だったが安くて、うまかった。暖房の効かない閉店中の店の中は体の芯まで冷えてしまうから、海老のチリソース定食とか、麻婆豆腐などといった辛くてボリュームのある昼飯は生き返るような思いであった。


今日は川口で育ったという写真家I氏と一緒に車で新宿から川口へ。30年前の川口の写真を並べる為にやってきた。明治通りから飛鳥山を左折都電の並走区間を下り王子駅のガードをくぐる。王子の駅前にはマクドナルドがあるが、物心ついた時から同じ場所に赤い看板。それを右にみてすぐ、北本通りに入る。都電荒川線はかつて、王子からこの道をずっと進み赤羽の交差点まで通っていた、というのは父親から聞いている。
今の赤羽岩渕駅の真上に位置するが、都電が通っていた頃は、終点の赤羽根停留場付近は映画館なども立ち並ぶ繁華街であったそうだ。今は東京の北の外れ、場末ということばがぴったりくるような素っ気ない街並。東京の残り香を確認するように車は快調に走り、荒川を越える。

川口元郷駅のほうから六間道路を進むとかつてぼくが工事をした現場。今は普通のショッピングモール。久しぶりに例の食堂を見てみたかった。
半年前は休みであったが、まだ看板も健在だったのだが、どうやら最近建物ごと取り壊され、駐車場になっていた。
by CHEAPTRIP | 2008-12-07 17:57 | 悶絶A定食